薄田泣菫『獨樂園』ウェッジ文庫
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一体庭樹といふものの多くが、人間の好みに適応するやうに囚へられ、撓められ、造り替へられてゐるのに比べて、雑木はその持味の素朴さ、粗々しさ、とげとげしさの感じが失はれてゐないだけに、それにとり囲まれてゐると、どうかすると人をして山林の中に棲遅してゐるやうな幻想を抱かしめるものだ。
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私はそつと手を伸ばして葉隠れの梅の実の一つを拗つた。そしてそれを口に入れてみた。梅はそのむかし王戎の見た李のやうにたまらなく苦酸つぱかつた。
「こいつも雑木だな。――だから折角実を結びながら、実のあることすら忘れられようといふもんだ。」
私は心からの親しみをもつて、この梅の木を見ないではいられなかつた。
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http://saibaiseikatsu.jp/kashihon.htm
