燭火 〜あかり咲く夜に〜たとえ だれもいなくてさえ
家のあかりをみるときは ほっとする
大戦下 防火管制のやみは
どんなにかこころぼそく 思いをひしぐものだったか
いっさいの電飾(イルミネーション)が落ちた世界
けれどひとは
みようとする意思までも 奪われていたのではない
あの時代に
いのちの尊厳が貶(おとし)められ
ことばがたわめられ
くらしていく土台が 根こそぎ切り崩された ただなかに
なお強く じぶんを
築きあげた価値を 信じるひとびとがいた
それは どんなにか こころづよいレジェンド
遠い時代の 遠い土地での記憶から
わたしたちは無垢でありえない
放射能 ダイオキシン チクロンB
ジェノサイドの暗い翳は
風を伝い 海をはって 土壌濃く刻まれてゆく
個ではない
集団の記憶へと
だけれども
圧倒的な暴力のまえに
たじろがず 信念を枉(ま)げなかったひとの
つみ重ねた役割と 意思
ゼロにはならなかった証(あかし)は たとえ
どんなにかぼそく たよりなげにみえたとしても
わたしたちに
あきらめることはないのだと ささやく
地上の戦火はいまだきえず
おだやかにうつる日常も
いつもんどり落つかしれぬ不安がさいなむ
十年後 じぶんはここにいると
若者が思い描けないのは なぜ
いのちは連続しているのに
日限(ぎ)りのカレンダーしかないのは なぜ
わたしたちはまだ 平和な世に
安閑と生まれきたのではない
あのネガは 遥けきよその事象でなく
いまを織り綯(な)う あざやかな 緯(よこいと)
あすを統べる 不確定な 縦糸(たて)
交差するその位置を
先人の架けた高さのなりに
記憶を継ぐ
ひとりで 走らねばならず
ひとりでは できない リレー
その燭(あかり)を 継ぎゆくために
音楽 : ヴィエニャフスキ作曲「レゲンデ」
"Légende" by H. Wieniawski
ヴァイオリン演奏 : 玲
詩と朗読 : みさきすずか
収録 : 横浜市旭区民文化センター音楽工房A
2008/12/18
きょうで すべての予定の配信を終えました。
番組を聴いてくださった方
エールを送ってくださった方 そして
本を読んでくださった方々に 心から御礼を申し上げます。
ありがとうございました。