野鼠萩原朔太郎
どこに私らの幸福があるのだらう
泥土の砂を掘れば掘るほど
悲しみはいよいよふかく湧いてくるではないか。
春は幔幕のかげにゆらゆらとして
遠く俥にゆすられながら行つてしまつた。
どこに私らの戀人があるのだらう
ばうばうとした野原に立つて口笛をふいてみても
もう永遠に空想の娘らは來やしない。
なみだによごれためるとんのづぼんをはいて
私は日傭人(ひようとり)のやうに歩いてゐる
ああもう希望もない 名誉もない 未来もない。
さうしてとりかへしのつかない悔恨ばかりが
野鼠のやうに走つて行つた。
底本:筑摩書房刊 「萩原朔太郎全集第二巻」所収 「定本青猫」より
朗読:みさきすずか
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もうすこしピンポイントで、いまの状況そのものという気がしました。
時代が、朔太郎に追いついたのかもしれません。