June 10, 2011, 7:18 pm
「野鼠」
nonezumi      野鼠

          萩原朔太郎

どこに私らの幸福があるのだらう
泥土の砂を掘れば掘るほど
悲しみはいよいよふかく湧いてくるではないか。
春は幔幕のかげにゆらゆらとして
遠く俥にゆすられながら行つてしまつた。
どこに私らの戀人があるのだらう
ばうばうとした野原に立つて口笛をふいてみても
もう永遠に空想の娘らは來やしない。
なみだによごれためるとんのづぼんをはいて
私は日傭人(ひようとり)のやうに歩いてゐる
ああもう希望もない 名誉もない 未来もない。
さうしてとりかへしのつかない悔恨ばかりが
野鼠のやうに走つて行つた。


底本:筑摩書房刊 「萩原朔太郎全集第二巻」所収             「定本青猫」より

朗読:みさきすずか




  
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Posted by Misaki Suzuka at June 10, 2011, 7:18 pmComments(2)TrackBack(0)
この記事へのコメント
migumi
August 10, 2011, 9:31 am 
テキストコメント
無沙汰しています。この詩、いまの時代の詩ですね!
音声コメント
このコメントには音声はありません。
 
Suzuka
August 11, 2011, 3:35 pm 
テキストコメント
はい、そう思いました。
もうすこしピンポイントで、いまの状況そのものという気がしました。

時代が、朔太郎に追いついたのかもしれません。
音声コメント
このコメントには音声はありません。
 
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