ご承知のように、日本語の文字には、漢字、ひらがな、カタカナの三種類があります。
外国の方が日本語の文字を習うとき、カタカナは嫌いだ、とか、カタカナはむずかしいという声を時々耳にします。いや、いや、カタカナがむずかしいはずはありません。
もともと(千年以上も前)カタカナは漢字の一部をとって作った表音文字で、当時の人々が漢文を日本語に読み直すとき、返り点や送りがなを書き込むのに便利なように工夫したものです。画数が少なく直線的で簡単な形なので、カタカナはすぐ覚えられます。ですから、長い間、いちばん易しい文字として、日本の子供たちはまずカタカナを習うのが普通でした。私が子供の頃は、小学一年生の国語の教科書はカタカナと少しの漢字だけで書かれていたし、絵本やまんがもすべてカタカナ書きでした。二年生になって初めてひらがなを勉強したときは、大人になったような気がして、感動したものでした。
宮沢賢治(*)は、「雨ニモマケズ」でもそうですが、よく漢字とカタカナ混じりの詩を書いています。当時、学校に行く機会の少ない貧しい子供たちにも読めるようにカタカナを使ったのでしょう。あるいは特別な意識なしに易しいカタカナをごく自然に使っただけなのかもしれません。彼のノートにはカタカナのメモ書きが多かったということです。
第二次世界大戦後の国語改革によって、小学校では、ひらがなを先にカタカナを二番目に教えるように変わりました。また、カタカナは、主に日本語化した欧米由来の名詞や、外国の場所や人の名前(外来語)を表記する時に使われ、通常の叙述には使われなくなりました。当時は違和感がありましたが、ひらがなとカタカナが役割を分担することで、文が読みやすくなったのは事実です。
カタカナは外来語だけでなく、「ガタガタゆれる」などの擬音語、擬態語や、「ネコ」、「イヌ」など種(しゅ:species)の名前、この文の中の「カタカナ」のような強調のときの表記にも使われます。これらも文を読みやすくしています。
カタカナを勉強するとき、ひらがなのときと同じように「ア」から「ン」まで表にして覚えるのではなく、よく似た形の文字、例えば、ほとんど同じに見える「り」と「リ」、「へ」と「へ」、とか、よく似ている「か」と「カ」、「う」と「ウ」、ひらがなと一部が共通する「な」と「ナ 」、「に」と「 ニ」など(まだ他にもあります)を拾い出して覚えれば、あとは少数です。全部おぼえなくても、実践的に単語に挑戦するのが習得の早道だと思います。例えば、ヘンリー、ヘリコプター、カナダ など。
カタカナが苦手な人に出会ったら、「カタカナは恐れるに足らず」と、上の簡易習得方を伝授してあげてください。
2007/05/05 渡辺 泰子
* 宮沢賢治:1896-1933 詩人、童話作家、教育者、農業指導家。
「雨ニモマケズ」、「風の又三郎」、「銀河鉄道の夜」などたくさんの名作を遺した。