June 13, 2011, 10:26 pm
訪れる離別に
痛む在り処は 脳の奥などではなく、
確かに心臓の辺りだった。
通いの店がなくなってしまう。
いつもの彼女は私にありがとうございます、と言った。
それは此方の台詞だった。
去年の秋に、黒色の服を選んでくれた彼女は
それ以後、私が店を訪れるたびに白を勧めた。
のらりくらりとかわしたつもりが、
いつの間にかクロゼットが明るくなってゆくのを
内心わくわくした気持ちで眺めていた。
何より、話し上手な彼女との会話は
疲れた一日の終わりをやさしくたたんでくれた。
服はいつかほつれ破けるだろう。
記憶も後を追うようにぼやけて去ってゆく。
それでも、黒に重ねられた白は
これからもずっと私のクロゼットと眼の奥に残る。
確かに心臓の辺りだった。
通いの店がなくなってしまう。
いつもの彼女は私にありがとうございます、と言った。
それは此方の台詞だった。
去年の秋に、黒色の服を選んでくれた彼女は
それ以後、私が店を訪れるたびに白を勧めた。
のらりくらりとかわしたつもりが、
いつの間にかクロゼットが明るくなってゆくのを
内心わくわくした気持ちで眺めていた。
何より、話し上手な彼女との会話は
疲れた一日の終わりをやさしくたたんでくれた。
服はいつかほつれ破けるだろう。
記憶も後を追うようにぼやけて去ってゆく。
それでも、黒に重ねられた白は
これからもずっと私のクロゼットと眼の奥に残る。
Posted by 雨音 at
June 13, 2011, 10:26 pm
April 24, 2011, 9:17 pm
甘えと悟り
ながらも、
定期的な更新はあきらめることにすると 明言せざるを得ない。
今更ですけれども・・・。
何せ半年近く留守にしてしまった。
いつも拍手してくださる方、本当にありがとうございます。
世間では花見の季節も終わる頃ですが、我が家の桜は今が満開となっている。
幾重にもなった花びらの、水でうすめた淡い色は
空が青ければ青いほど惚れ惚れするうつくしさ。
数え切れないほどの桜を見てきたけれど
我が家の桜が一番の美人であると、心中確信している。
今年の厳しい春の始まりに、涙のように降る薄紅が心底愛おしく
きっと来年はやさしい春の雨をと願った。
定期的な更新はあきらめることにすると 明言せざるを得ない。
今更ですけれども・・・。
何せ半年近く留守にしてしまった。
いつも拍手してくださる方、本当にありがとうございます。
世間では花見の季節も終わる頃ですが、我が家の桜は今が満開となっている。
幾重にもなった花びらの、水でうすめた淡い色は
空が青ければ青いほど惚れ惚れするうつくしさ。
数え切れないほどの桜を見てきたけれど
我が家の桜が一番の美人であると、心中確信している。
今年の厳しい春の始まりに、涙のように降る薄紅が心底愛おしく
きっと来年はやさしい春の雨をと願った。
Posted by 雨音 at
April 24, 2011, 9:17 pm
November 17, 2010, 8:32 pm
意味を成さない
台詞だ、と思う。
聞いて気分が悪いわけではない。
むしろ平生、賞賛より叱咤を多く聞いている身には
お世辞と分かっていても嬉しいのは認めよう。
しかし、試着室から出て来た客に
「よくお似合いです」しか言えない店員ほど、購買欲を削ぐものはない と思うのです。
そして すばらしい接客に適うものなどない、とも。
先日、最寄のファッションビルにある小さな洋服店に入った。
ハンガーをかたかた動かしていると、どうかな と思う黒色の一着。
ちょっと眺めていると、店員の女性が声をかけてくれた。
それ素敵ですよね、に留まらず ボタンや襟の形について
こうこだわっていて、だからこう見せることが出来る と話す。
そう言われてみれば確かに などと関心していると、
黒い服をお探しですかと聞かれた。
あまり派手な飾りがついていないほうがお好きですか、という質問には
どうしてわかったのだろう、とも思った。
多分、その日に着ていた服装から判断したのだろう。
ひとつ頷くと、彼女は小さな店内の隅々から似たような黒い服を5、6着 持ってきて
これは此処が良いけれど、ここは今のとは違う
大人しい雰囲気が好きなら少し割高だけれどこちらが、
もし丈が長いのをお探しならこちらが、とひとつひとつ軽い説明をしてくれる。
そのうちから2着を選んで試着した。
試着室から出ると、彼女は笑顔で「よくお似合いです」と言った。
「先程のも大人っぽくて素敵でしたが、
こちらのほうがお客様の静かで落ち着いた雰囲気に合いますね。
黒に黒の装飾ですから、それほど派手ではないですし
上にどの色を羽織っても綺麗に着れると思います。
一着目はタートルネックでしたけど、これは広く首が開いているので
今の髪型にはぴったりですよ」
店からの帰り道 彼女の言葉を反芻しながら、ちらちらと手提げの中身に目をやる。
不思議にも、この一着がずっとずっと探していた一着で
そしてやっと見つけ出したような、そんな気持ちがした。
いつ着ようかな、明日にしようか明後日にしようか。上には何を羽織ろう。
物欲ではない大切なうつわが、満たされたのを今も感じている。
聞いて気分が悪いわけではない。
むしろ平生、賞賛より叱咤を多く聞いている身には
お世辞と分かっていても嬉しいのは認めよう。
しかし、試着室から出て来た客に
「よくお似合いです」しか言えない店員ほど、購買欲を削ぐものはない と思うのです。
そして すばらしい接客に適うものなどない、とも。
先日、最寄のファッションビルにある小さな洋服店に入った。
ハンガーをかたかた動かしていると、どうかな と思う黒色の一着。
ちょっと眺めていると、店員の女性が声をかけてくれた。
それ素敵ですよね、に留まらず ボタンや襟の形について
こうこだわっていて、だからこう見せることが出来る と話す。
そう言われてみれば確かに などと関心していると、
黒い服をお探しですかと聞かれた。
あまり派手な飾りがついていないほうがお好きですか、という質問には
どうしてわかったのだろう、とも思った。
多分、その日に着ていた服装から判断したのだろう。
ひとつ頷くと、彼女は小さな店内の隅々から似たような黒い服を5、6着 持ってきて
これは此処が良いけれど、ここは今のとは違う
大人しい雰囲気が好きなら少し割高だけれどこちらが、
もし丈が長いのをお探しならこちらが、とひとつひとつ軽い説明をしてくれる。
そのうちから2着を選んで試着した。
試着室から出ると、彼女は笑顔で「よくお似合いです」と言った。
「先程のも大人っぽくて素敵でしたが、
こちらのほうがお客様の静かで落ち着いた雰囲気に合いますね。
黒に黒の装飾ですから、それほど派手ではないですし
上にどの色を羽織っても綺麗に着れると思います。
一着目はタートルネックでしたけど、これは広く首が開いているので
今の髪型にはぴったりですよ」
店からの帰り道 彼女の言葉を反芻しながら、ちらちらと手提げの中身に目をやる。
不思議にも、この一着がずっとずっと探していた一着で
そしてやっと見つけ出したような、そんな気持ちがした。
いつ着ようかな、明日にしようか明後日にしようか。上には何を羽織ろう。
物欲ではない大切なうつわが、満たされたのを今も感じている。
Posted by 雨音 at
November 17, 2010, 8:32 pm
October 16, 2010, 10:31 pm
どんな抵抗も
好奇心を前にしては、白旗を揚げるしかないようだ。
パンドラの箱然り、玉手箱然り。
今まで何匹の猫が哀れ犠牲になったことか。
私のそれが、自身の髪に向けられたのはつい先程のこと。
あの、髪を切るときにする音。
紙を切ったのでは得られない、濁音。
うなじでやられると、背筋がぞくりとする あれ。
工作用のはさみでもあの音は出るだろうか、と
思ったときにはもう水色の持ち手に手をかけていた。
床屋か美容院でしか散髪罷りならぬ、というわけでもないけれど
自分でじょきじょきとやるのには、多少の背反気分を味わう。
それにしても良い音だ。ひやりとした刃が頬に冷たい。
握る三本の指だけで、半年 悪くすれば一年を共にした
自身の一部がゴミに変わるのだから、身体というのもあいまいなものだ。
私の気紛れな好奇心は、前髪から右耳の後ろ辺りを短くした頃
めでたく腹八分目に到達したらしい。
左右のバランスを忘れたこの髪形を、明日からどう扱おうか。
今度髪を切りに行くとき、どう言い訳をしようか。
そんなことを、切り紙をしながら考えている。
パンドラの箱然り、玉手箱然り。
今まで何匹の猫が哀れ犠牲になったことか。
私のそれが、自身の髪に向けられたのはつい先程のこと。
あの、髪を切るときにする音。
紙を切ったのでは得られない、濁音。
うなじでやられると、背筋がぞくりとする あれ。
工作用のはさみでもあの音は出るだろうか、と
思ったときにはもう水色の持ち手に手をかけていた。
床屋か美容院でしか散髪罷りならぬ、というわけでもないけれど
自分でじょきじょきとやるのには、多少の背反気分を味わう。
それにしても良い音だ。ひやりとした刃が頬に冷たい。
握る三本の指だけで、半年 悪くすれば一年を共にした
自身の一部がゴミに変わるのだから、身体というのもあいまいなものだ。
私の気紛れな好奇心は、前髪から右耳の後ろ辺りを短くした頃
めでたく腹八分目に到達したらしい。
左右のバランスを忘れたこの髪形を、明日からどう扱おうか。
今度髪を切りに行くとき、どう言い訳をしようか。
そんなことを、切り紙をしながら考えている。
Posted by 雨音 at
October 16, 2010, 10:31 pm
October 2, 2010, 6:16 pm
最早、
このブログが機能しているのかわからない、のだが。
11月の中頃には、この忙しさも一旦落ち着くので
もうしばらくお待ちください。
録音が全く進んでいない、という事実。
しかしクリスマスまでに賢者の贈り物をどうにか…どうにかならないだろうか。
あればかりはクリスマス前を逃しては・・・来年の冬を待つより他がない、し。
檸檬も終わっていないのだけど。
王様も編集が終わっていないのだけど。
更に言えば、もうどちらも録り直したいし
劣悪な録音環境と機材も改善したい。するべきである。
しかし何はともあれ とりあえず秋を乗り切ります。
拍手。いつもありがとうございます。
とてもうれしいです。
11月の中頃には、この忙しさも一旦落ち着くので
もうしばらくお待ちください。
録音が全く進んでいない、という事実。
しかしクリスマスまでに賢者の贈り物をどうにか…どうにかならないだろうか。
あればかりはクリスマス前を逃しては・・・来年の冬を待つより他がない、し。
檸檬も終わっていないのだけど。
王様も編集が終わっていないのだけど。
更に言えば、もうどちらも録り直したいし
劣悪な録音環境と機材も改善したい。するべきである。
しかし何はともあれ とりあえず秋を乗り切ります。
拍手。いつもありがとうございます。
とてもうれしいです。
Posted by 雨音 at
October 2, 2010, 6:16 pm
September 26, 2010, 9:57 pm
失っては
また、息の仕方も忘れてしまうような気がする。
最近は歩き方も随分と思い出してきました。
眠らなきゃ眠らなきゃと思うと眠れないのと同じで
意識すると、歩けない。息も出来なくなる。
精神とは何とも扱いがたいものです。
楽しみにしていた行事に、顔を出してきました。
顔を出してきたというか・・・結局両日とも終了時間までいたのだけれど。
里帰りした気分でした。
大好きな歌声。好きなひとたち沢山。途中まで一緒の帰り道。
そしてまさか、眼鏡を変えたことに気づかれるとは。
名前も覚えていないだろうと思ったのに。
久方ぶりにひとに構ってもらえたので満足です。
充電したエネルギーで、何とか秋を乗り切りたいところ。
次に会える日が、楽しみだ。
最近は歩き方も随分と思い出してきました。
眠らなきゃ眠らなきゃと思うと眠れないのと同じで
意識すると、歩けない。息も出来なくなる。
精神とは何とも扱いがたいものです。
楽しみにしていた行事に、顔を出してきました。
顔を出してきたというか・・・結局両日とも終了時間までいたのだけれど。
里帰りした気分でした。
大好きな歌声。好きなひとたち沢山。途中まで一緒の帰り道。
そしてまさか、眼鏡を変えたことに気づかれるとは。
名前も覚えていないだろうと思ったのに。
久方ぶりにひとに構ってもらえたので満足です。
充電したエネルギーで、何とか秋を乗り切りたいところ。
次に会える日が、楽しみだ。
Posted by 雨音 at
September 26, 2010, 9:57 pm
September 15, 2010, 11:37 pm
影を
求めて歩く、真夏のような秋の始まり。
秋・・・?
『檸檬』のろのろと進んでいます。
やっと終わりが見えて来ました・・・。
今は、カギ括弧の前で立ちすくんでいる状態。
台詞はどうしても、ああでもないこうでもないと おろおろしてしまう。
今回で分かったけれど、やはり私には音訳は難しいようだ。
勿論、感情の欠片もこめずに読むなどということは無理だろうが
聞き手側が解釈出来る余地をどれほど残せるか
それが音訳としての質の高さと思う。
しかし、今回の『檸檬』はもう完全に「私の『檸檬』」に成ってしまっている。
それはそれで、朗読としては良い。
だが音訳の意義を考えると、どうにも朗読一本にしぼる気にはならない。
裸の王様のような、子供向けならばまだしも
自分で解釈せずして何を楽しみに読むのか、という人にとっては
朗読などされては堪らないのだから。
声自体は変えようもないのだがら仕方ないにしても、
もう少し読み方について考える必要がある な。
秋・・・?
『檸檬』のろのろと進んでいます。
やっと終わりが見えて来ました・・・。
今は、カギ括弧の前で立ちすくんでいる状態。
台詞はどうしても、ああでもないこうでもないと おろおろしてしまう。
今回で分かったけれど、やはり私には音訳は難しいようだ。
勿論、感情の欠片もこめずに読むなどということは無理だろうが
聞き手側が解釈出来る余地をどれほど残せるか
それが音訳としての質の高さと思う。
しかし、今回の『檸檬』はもう完全に「私の『檸檬』」に成ってしまっている。
それはそれで、朗読としては良い。
だが音訳の意義を考えると、どうにも朗読一本にしぼる気にはならない。
裸の王様のような、子供向けならばまだしも
自分で解釈せずして何を楽しみに読むのか、という人にとっては
朗読などされては堪らないのだから。
声自体は変えようもないのだがら仕方ないにしても、
もう少し読み方について考える必要がある な。
Posted by 雨音 at
September 15, 2010, 11:37 pm
September 4, 2010, 11:43 pm
理由も、理論も
取り落としてしまう、静かな重力が働いている と
私はひとにふれるたび思うのです。
芝居を見にゆくお誘いを受け 少しばかり、遠出をしました。
ひとと会うのは、とても嬉しい。
たとえ、うだるような暑さに支配されていようと
雑踏の中で相手を見つける、相手に見つけてもらえる瞬間の
飛び跳ねたくなる気持ちは変わらない。
電車に揺られつつ つり革の代わりに
私が話すことが苦手だと
分かってくれているひとと話す、安心を握り締めた。
手を離せば地に落ちる
その無表情な定理さえ、やさしいと感じてしまうくらいに。
私はひとにふれるたび思うのです。
芝居を見にゆくお誘いを受け 少しばかり、遠出をしました。
ひとと会うのは、とても嬉しい。
たとえ、うだるような暑さに支配されていようと
雑踏の中で相手を見つける、相手に見つけてもらえる瞬間の
飛び跳ねたくなる気持ちは変わらない。
電車に揺られつつ つり革の代わりに
私が話すことが苦手だと
分かってくれているひとと話す、安心を握り締めた。
手を離せば地に落ちる
その無表情な定理さえ、やさしいと感じてしまうくらいに。
Posted by 雨音 at
September 4, 2010, 11:43 pm
August 31, 2010, 9:52 pm
戯れに
刺しているのではないと、わかっていても
薄い憎悪は湧くものです。
久しぶりに外に出たら、数ヵ所を蚊にくわれてしまいました。
それは、向こうも生きるか死ぬかでしょうけれども・・・
よりによって手首の静脈付近を刺すことはなかろうに。
二の腕近くまで発疹が出るという惨事。
薮蚊だったら病院行き と考えれば不幸中の幸いか。
蚊だって、誰が虫アレルギーかなんて分からないものね・・・。
お互い、辛い季節です。
薄い憎悪は湧くものです。
久しぶりに外に出たら、数ヵ所を蚊にくわれてしまいました。
それは、向こうも生きるか死ぬかでしょうけれども・・・
よりによって手首の静脈付近を刺すことはなかろうに。
二の腕近くまで発疹が出るという惨事。
薮蚊だったら病院行き と考えれば不幸中の幸いか。
蚊だって、誰が虫アレルギーかなんて分からないものね・・・。
お互い、辛い季節です。
Posted by 雨音 at
August 31, 2010, 9:52 pm
August 27, 2010, 10:51 pm
懐かしい
びいどろ の涼しさを、味わいたくなりました。
梶井基次郎の『檸檬』。
現在、1/3くらいまで録音が進んでいます。
まだまだ時間がかかりそう。
私も幼い頃、大小様々のビー玉を口に含んでは
そのかすかな爽やかさを堪能していました。
あやうく呑み込みかけたのも、今では笑い話・・・だろうか。
光にすかして色の変化を楽しむのに飽き足らず
当時は詩美なんて言葉を知っているわけもないが
あの、かちゃかちゃいうのが好きで 人目を忍んでは口に放っていたものです。
残暑の鬱陶しさに負けそうな方は、是非 一読を。
梶井基次郎の『檸檬』。
現在、1/3くらいまで録音が進んでいます。
まだまだ時間がかかりそう。
私も幼い頃、大小様々のビー玉を口に含んでは
そのかすかな爽やかさを堪能していました。
あやうく呑み込みかけたのも、今では笑い話・・・だろうか。
光にすかして色の変化を楽しむのに飽き足らず
当時は詩美なんて言葉を知っているわけもないが
あの、かちゃかちゃいうのが好きで 人目を忍んでは口に放っていたものです。
残暑の鬱陶しさに負けそうな方は、是非 一読を。
Posted by 雨音 at
August 27, 2010, 10:51 pm

